家内安全や五穀豊穣(ごこくほうじょう)などを願って鎌倉時代から続くとされる「時又初午(はつうま)はだか祭り」が11日、飯田市時又で行われた。みこしを担いだまま天竜川に入る祭りの見せ場には、多くの観客が詰め掛けて祭りにそれぞれの願いを込めた。
馬や仏像、米俵などをかたどったみこしには、「3・11わたしたちは決して忘れない」と書かれた紙が付いている。計11基のみこしを担ぐ地区内外の約120人は、午後1時ごろに地元の長石寺を出発。時折風が強く吹く中、天竜川の時又港を目指して町内を練り歩いた。女性だけで担ぐみこしもあり、沿道の観客たちを盛り上げた。
川辺に着くと、担ぎ手たちは「御水(オンスイ)、御水」と掛け声を発しながら、日差しできらきらと光る天竜川に次々となだれ込んだ。天竜川で川舟下りの船頭として働く矢沢啓志(ひろし)さん(57)=飯田市=が「いつもより50センチくらい水かさが増している」と話す天竜川に、担ぎ手たちは胸の高さまで漬かり、みこしを高々と持ち上げていた。
名古屋市の会社員沢田亮さん(25)は婚約者の女性と初めて祭りを訪れたといい、「迫力に圧倒された」。沢田さんは女性と見つめ合って「家内安全を願う祭りなので、問題なく結婚できそうです」とはにかんでいた。