継体天皇がお手植えし、樹齢1500年余りとの伝説が残る薄墨桜の苗木が3月9日、ゆかりの地である福井県福井市の足羽山の麓に植樹された。継体天皇が発見し、民の生計を立てるために採掘を奨励したとされる笏谷石の採石場跡地「七ツ尾口」付近。企画者は「継体天皇の足跡とともに後世に残していきたい」と話している。
跡地を管理する「越前石」(本社福井市)の代表取締役、福島喜衞さん(66)が企画した。国の天然記念物に指定されている岐阜県本巣市(旧根尾村)にある薄墨桜の種子から、地元の人が育てた苗木を譲り受けた。
9日は岐阜県から「薄墨桜植樹隊」の6人が樹齢10年以上育った苗木2本を持参した。継体天皇を祭る足羽神社の馬來田善敬宮司による神事の後、福島さんらが交代で苗木の根元に土をかけていった。
植樹隊として来福した、薄墨桜を守り広げる会事務局の三本木隆さん(65)は「継体天皇がめでられた薄墨桜の子孫を、ゆかりの地に持ってくることができてありがたい」と話す。福島さんは「1500年前に福井の経済を潤した笏谷石の採掘場が忘れられようとしている。継体天皇ゆかりの桜を、笏谷石と組み合わせて足跡が残る場所に広げていけたら」としている。
福島さんは20年前から一帯の整備に着手。雑木の伐採や花の植栽、廃棄物の撤去などを進め、2018年に薄墨桜の苗木6本を植樹。19年には採石場内に放置されていた笏谷石を集めて、記念碑を建立した。今後は周辺に残る坑道の横穴を歩いて見学できるよう整備も検討している。