店内に展示した甑(こしき)を披露する原さん

店内に展示した甑(こしき)を披露する原さん

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古式な製法つなぐ「甑」貴重な木製 上田の蔵元店舗で展示

信濃毎日新聞(2021年7月10日)

 みそ製造・販売などの「酒の原商店」(上田市上塩尻)が、こうじを造るために米を蒸す木おけ「甑(こしき)」を新調した。25日まで店内に展示する。今は職人がわずかしかおらず、新品は貴重という。同店の原有紀さん(53)は「この機会に見てほしい。木おけがなくて困っている醸造元などにも知ってもらいたい」と話す。

 神戸市の剣菱(けんびし)酒造で作られ、先月届いた。直径約1メートル、高さ約90センチ。奈良県産の吉野杉を使った。貯蔵用の木おけは木目が平行でない「板目」なのに対し、甑は縦に真っすぐ木目が通る「正目」。水分を外に出すためだという。底板が7センチと厚いのも特徴だ。木の選別と乾燥に450日かけ、4日間で組み立てた。

 今使っている甑は1949(昭和24)年に貯蔵用として作られた。35年前に譲り受けて加工。みそ、甘酒造りに週1回ほど使う。傷みが目立ち、補強に腐心してきた。

 木おけは蒸し米の仕上がりが安定し、こうじ菌が繁殖しやすいという。「創業時の造り方を踏襲したい」と6年前にしょうゆや酒の醸造元に声を掛けるなどして探したが、どこもステンレス製。大阪にある日本で大おけを作る最後の会社には「廃業するので新規は受けない」と断られた。

 香川県・小豆島で進む「木桶(おけ)職人復活プロジェクト」をネットで知り、昨年1月に訪問。製造を学び、作る過程を見学して大変さを目の当たりにしたという。プロジェクトの発起人に事情を話すと、500年以上の歴史を持つ剣菱酒造を紹介された。

 同酒造は昔ながらの味を後世に残そうと取り組み、大おけをはじめ、道具も自社で作る。ちょうど、社外からの受注製造を始めようとした矢先だった。同社の白樫(しらかし)政孝さん(44)は「受注で木製道具の良さが広まり、後世に残せる。数をこなすことで職人の育成にもつながる」と話す。

 組み立てに参加した原さんは「職人のすごさ、正目のきれいさに感動した」。展示後、釜の上に設置し、70~80年使う。「あく抜き作業などをし、秋口の縁起の良い日に使い始めたい」と目を輝かせた。水曜定休。

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