遺跡出土品を劣化から守る「保存科学」の手法に焦点を当てた特別公開展「文化財をまもる-一乗谷の保存と活用」が福井市の福井県立一乗谷朝倉氏遺跡資料館で開かれている。12月15日まで。
保存処理のさまざまな手法をパネルで解説し、こうした処理を経た国の重要文化財(重文)を含む出土品約250点を展示した。
遺物の内部構造調査や成分分析の手法としてX線照射法を紹介。成分分析の結果、ベネチア製と分かったガラス製品、金色の輝きが金ではなく真ちゅうを用いていることが分かった錠前や飾り金具などが並ぶ。
ポリエチレングリコールという合成樹脂やアルコールを染み込ませる木製品の保存法も紹介。現在の将棋の駒にはない「酔象(すいぞう)」を含む「将棋の駒一式」(重文)をはじめ櫛(くし)や糸車など、保存処理を施した木製品を展示した。金属の錆(さ)び防止にアクリル樹脂を染み込ませたり塗ったりした弾丸やくぎなども並ぶ。
15日には遺物整理室や収蔵庫を見て回るバックヤードツアーがあり、越前焼のかめの復元作業などが公開された。
同資料館の川越光洋・文化財調査員は「出土から公開に至るまでに多くの科学的処理が必要。調査研究と後世への保存に欠かせない手法を知ってほしい」と話している。