今年生誕120年となる日本映画の巨匠、小津安二郎監督(1903~63年)が晩年を過ごした茅野市蓼科にある山荘「無芸荘」が観光客らでにぎわっている。9月には同市で「小津安二郎記念・蓼科高原映画祭」があり、改めて小津監督の足跡に注目する人も多い。無芸荘でいろりの世話をしたり逸話を披露したりする「火代(ひじろ)番」は「小津監督の暮らしぶりや映画の魅力を伝えたい」と張り切っている。
1954(昭和29)年、盟友の脚本家野田高梧(こうご)(1893~1968年)に誘われた小津監督は、蓼科にあった野田の山荘「雲呼(うんこ)荘」を訪問。蓼科を気に入った小津監督は山荘を借りて無芸荘と名付け、60歳で亡くなるまでの7年間、仕事場の他、来客を招待する場所として使った。2003年、茅野市が生誕100年を記念し、ビーナスライン沿いの現在の場所に移築した。
「ここは夏でも火が入っています」と火代番の藤森光吉さん(77)=茅野市湖東。小津監督はいろりを囲んで料理や酒で客をもてなしたとされ、訪れた人にその雰囲気を味わってもらおうと、開館時間はいろりに火を入れている。
火代番は藤森さんを含め3人が交代で担う。一つのシナリオが完成するまでに100本もの酒瓶が並んだことや、いろりですき焼きを振る舞ったこと、地元住民らとの交流などさまざまなエピソードも訪れた人に伝えている。
無芸荘は例年5~11月の土日を中心に開館しているが、生誕120年の節目となる今年は例年より開館日を増やした。24日に大阪府から訪れた雁野清司さん(74)は「(無芸荘は)趣があってとてもいい建物。来月の映画祭も訪れてみたい」と話していた。
小津安二郎記念・蓼科高原映画祭は9月23日開幕。10月1日まで、同市内の新星劇場などでの上映会や無芸荘などでの催しを企画している。
無芸荘は9月10日まで休みなく開館。映画祭の期間も開館する。入館料100円。午前10時~午後4時。
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