長野市の「道の駅信州新町」内のそば店「そば信」が、ニホンジカの肉を使ったそばの提供を始めた。店主の中村翔さん(35)が、「鹿肉のおいしさをシンプルに味わってほしい」と1年ほどかけて開発。地元農家が野生鳥獣の被害に悩む中、地域の人がジビエ料理に親しむきっかけになればと願っている。
発売したのは「信州ジビエ 鹿のピリ辛肉そば」。同市中条地区にある野生鳥獣解体処理施設「市ジビエ加工センター」から仕入れたばら肉をやわらかく煮込み、温かいそばに載せた。脂分が少ない鹿肉とそば、汁の一体感を高め、味のアクセントにするため、ごま風味のラー油も添えた。
地元名物のジンギスカンで羊肉には親しんでいたものの「ニホンジカは食べたことがなかった」と中村さん。つくねにしたり、ローストを冷たいそばに載せたりと試行錯誤する中で、おいしさに気付いたという。新メニューは好評で、「鯨肉のよう」という年配客もいるという。
同店はこれまでも地元豆腐店の豆乳や県産の豚肉や鶏肉を使った限定商品を発売。今回はジビエに着目した。店で使う野菜を信州新町で育てる中村さんの祖母を含め、地元農家にとって田畑を荒らすニホンジカやイノシシは悩みの種で、中村さんは「店でおいしさを知ってもらい、地元の人が普段から食べるようになれば、捕獲数も増えるのではないか」と考えたという。
2019年の同センター稼働後、中条や信州新町でジビエを活用して地域を盛り上げようとする動きが出ていることにも刺激を受けた。税込み850円。3月中ごろまで提供する予定。その後も冬季の限定商品などとして販売を続けたいとしている。